市町村議会議員研修「3日間コース」
20180704-06
市町村議会議員研修「3日間コース」社会保障・社会福祉
介護保険と地域ケア
淑徳大学コミュニティ政策学部(学部長) 教授 鏡諭(かがみ さとし)氏
2018年から施行される介護保険法改正案は2017年5月26日に参議院で可決成立した。
改正案の議論の過程では、要介護2までを軽度者と位置づけ、訪問介護給付の生活援助等の縮減をすすめる議論があった。結果的には、実施は見送られたが、地域支援事業枠に組み込むという案もでた。しかし、訪問介護の生活援助についての見直しが組み込まれ、これまでのプロフェッショナルの事業者からボランタリーな団体によるサービス転換が期待されると同時に給付の縮減をめざしている。
第1章2018年介護保険改正の内容
1.介護保険制度の給付と負担
(1)財務省等による財政の締め付け
厚労省は、財政健全化のため自然増の伸びを5千億円と高齢化の水準にとどめることを要請しており1400億円の圧縮が課題になった。
(1)2018年改正の内容
サービスの縮減は見送られたが、高所得者の負担増と介護報酬の基本ベースの減額が盛り込まれた。
第2章介護保険が目指したもの
1.介護保険の創設の背景
介護保険制度以前は、高齢者が特別養護老人ホームや養護老人ホームなどに入所する場合、「措置」制度で都道府県または、市町の福祉事務所が入所を決定していた。これは、福祉サービスを利用する人を、行政が「特別に福祉支援が必要な人」と決定して、施設等での生活が維持できる給付を提供していたのである。
福祉の措置制度の背景には、伝統的な行政法学の行政庁を行政主体とし、国民を行政客体とする考えをもとにしていたのである。その根底には、福祉を恩恵・滋恵ととらえ利用者を消極的な受益者とする思想があったのである。
2.介護予防から地域包括支援事業へ
2013年8月に国民会議が首相に提出した報告書では、第6期介護保険事業計画を地域包括ケア計画にする事や要支援者に対する予防給付を地域包括推進事業に段階的に移行する事が盛り込まれた。
給付は保険料を支払うことに対する対価であるが、市町村の事業になった時に、権利性のない行政行為となってしまうのである。ここは慎重な議論を要する。
3.要介護認定ははじめて全国スケール
要介護認定は、介護を必要とな者の必要度をはかるスケールである。
(1)要介護認定とは何か?
介護保険制度では、寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合や家事や身支度等の日常生活に支援が必要であり、特に介護予防サービスが効果的な状態(要支援状態)になった場合に、介護サービスを受けることができる。
しかし、その基準は全国一律に客観的に定めているが、現実には各都道府県で差がある。
(2)要介護認定の流れ
市町村の認定調査員による心身の状況調査及び主治医意見書に基づくコンピュータ判定(一次判定)を行う。
(3)要支援認定とは
要介護認定のような全国一律の基準から漏れる人を救うのが要支援認定の本当の意味であり、後付けで介護に必要な状況を先延ばし(介護予防)の考え方が組み込まれたのである。
4.介護保険という名の安心システム
2000年に施行された介護保険制度は、介護の社会化を標榜し、前述の様々な状況を改善する目的とした。
特に、介護の必要量を定量的に測る要介護認定、様々な給付の裏づけとなる介護保険料の設定。NPOを含む民間サービス事業者の参入など、それまでの福祉制度になかったシステムを取り入れた点が大きな特徴である。
(2)地域包括ケアとは何か
それぞれの自治体が主体的に地域と向き合って実施してきた政策なのである。地域を丁寧に診て、把握してニーズをくみ取り、政策化するのが地域包括ケアシステムの本来の姿である。自治体行政による政策づくりそのものである。
(3)地域包括支援センターの創設
2006年に改正で創設された地域の支援機関である。業務は、総合相談支援、権利擁護・虐待防止、困難・継続ケースにかかるケアマネ支援、介護予防マネジメントでその目的は、地域に住む高齢者等が安心して暮らすことを支援するのが目的で整備された。
(4)介護保険制度における適正性とは
介護保険制度にを使うためには、保険事故に対して「ケアに費やされる時間」による74項目の基準によって判定される要介護認定の仕組みによる。
介護保険法は、第1条にその目的を示している。「第1条 加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、介護・看護・療養上の管理・その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じた自立した日常生活を営むことができるよう、−
第2号被保険者は4315万人。約7700万人の被保険者が保険料を支払い、同時にサービスを利用している人の数は、605万人となる。それは、被保険者総数の7.8%の受給者となり、高齢者の18%が利用する制度である。これは、利用している人と利用していない人のはっきりした線引きが行われ、利用していない人は介護保険の給付サービスについてわからない構造を生んだ。さらに、制度未利用である92%の人たちは、毎月の保険料が負担感となる。一般の評価も保険料が高いか低いかという議論が中心となってしまう。これに対して同じ社会保険制度を利用している健康保険制度では、7900万人の加入者に対して、まったく給付を受けていない人は、極めて少ないため、制度に対しての理解はあり、全く使われていない介護保険との違いは大きい。
その意味では、社会連帯を基本とした、社会保険の仕組みとして介護を必要となった高齢者期を支える重要な制度として、社会的な地位を得たと言えるが、同時に一般の人たちには、まだまだ分かりにくい制度として位置づいている。したがって、2006年制度改正以降、国は、負担の中心の見直しを進めており、高齢者の生活は、制度開始以前から依然として家族の介護力に期待する構造が続いており、介護のための家族の覚悟も必要な今日の状況がある。
第3章地域包括ケアシステムのさらなる進化
1.2012年介護保険法の改正の動向
厚労省で構想する地域包括ケアシステムは、自治体が地域住民と協力して、地域でつくる連携システムである。そうであるならば、自治体の独自システムによる保険給付以外の保険・福祉・医療の対応が必要となる。しかし、厳密にいえばそれは保険の枠組みで語る問題ではない、地域のトータルケアの取り組みであり、自治体の責任となる課題である。
第4章介護予防・日常生活支援総合事業の対応
1.介護予防日常生活支援総合事業とは
2015年4月からの介護保険法改正の中に予防給付(訪問介護・通所介護)を市町村の行う総合事業へ移行が、平成27年度から平成29年度までの3か年の内に実施することが義務付けられた。介護保険の予防給付とは別枠の地域支援事業に、市町村が主体となった新しい総合事業(訪問型事業、通所型事業、その他の事業「総合事業」)を実施するものである。
備考
30万人都市で100床を増やすと保険料が100円上がる。
非営利的な仕事を行政がやれ/ハンナアレン
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